目次
よくあるネット詐欺の手口
・フィッシングサイト
大手サービスに似せた偽のサイトなどを展開し、ユーザーからパスワードやカード情報を入手する手口です。フィッシング詐欺と呼ばれ、仕掛けられたサイトをフィッシングサイトと言います。参考:警察庁「フィッシング対策」
・知名度が低い小規模な偽ショッピングサイト
ショッピングサイトにて在庫が無い商品を販売し支払い後に商品が到着せず、支払代金を騙し取られる手口です。知名度が低いサイトは普通は利用しませんが、入手が困難な商品や格安価格で販売されている場合、顧客の判断力が鈍って購入してしまう可能性があります。参考:警察庁「偽ショッピングサイト・詐欺サイト対策」
・安心できる会社が運営しているように見せかけた偽サイト
安心できる会社が運営しているように見せかけた偽サイトを展開し、商品の購入料金や利用料金などを騙し取る手口です。安心できる会社とは、有名企業、大企業の子会社・関連会社、もしくは有名企業に名前を似せた会社などです。有名会社の社名を用いた場合はサイトが閉鎖されやすいですが、短期間では存在できてしまいます。また「有名会社に似せた社名」、「有名会社の存在しない子会社」などの場合は摘発されにくくなり、より長い期間存在できてしまう可能性があります。
・紙媒体の広告とウェブサイトを組み合わせ
紙媒体の広告から集客し、ウェブサイトで補助的に顧客を安心させ、購入代金などを騙し取る手口です。ウェブサイトでは顧客を安心させる情報が掲載されます。
なぜネット詐欺がなくならないのか?
ネット詐欺がなくならない理由は以下のとおりです。警察は犯人を逮捕したくても犯人を特定できない場合があり、また海外の犯罪者は簡単には検挙できないため、詐欺がなくなりにくい状況です。
ネット詐欺が無くならない理由
・対面での取引がないため、消費者を騙しやすい。
・ネットや会社知識に疎い消費者が存在する。
・見た目だけであれば、オリジナルサイトをコピーして簡単にサイト構築できてしまう。
・初期投資が少なく済む。1,2名などの少人数でも出来る。
・犯人を特定されにくい手法が存在する。海外サーバー等を経由するなどし警察の調査を逃れる。
・東南アジアなど海外の詐欺集団から狙われる。犯罪者は国内のみではない。
・ネットのサービスは新しい仕組みが生まれる傾向があり、便乗して新しい騙し手口が生まれる。
怪しい会社の手口
顧客の想定と異なる怪しい会社は世間に多数存在しています。怪しい会社の厳密な定義は難しいですが、例えば「顧客には100名くらいの規模の会社に感じさせたものの、実態はマンションの一室の数名の会社だった」のように一般的な会社のイメージとは異なるようなケースです。怪しい会社は「詐欺罪には該当しない」、もしくは「軽度の詐欺」、「誇大表現」のため、警察が検挙することは基本的にありません。また世間では様々な事情から怪しい会社が存在しますが、「怪しい会社 = 悪い会社」とも言い切れず、判断が難しい存在です。 一見怪しい会社に見えても、単純に規模が小さいだけで良心的な会社である場合もあります。
怪しい会社の手口
・小さな販売会社・営業会社が「格安」などをウリに質が低い商品を販売する。
・都会の小さな会社が地方の地域密着型の場に雑なサービスを提供する。
・聞きなれない取引や事業形態、かつ専門性が低い事(安易な仕組み等)を提案する。
・支払い先が想定と異なる別会社(ペーパーカンパニーなど)である。
・取引で誇大表現や虚偽が多く顧客とのトラブルが多い。
・専門性が低いコンサルティングや雑な投資話を持ちかける。
怪しい会社の特徴
・信頼ありそうな社名だが従業員は1名のみ。
・会社のイメージ写真ではビルが掲載されているが、従業員は1名のみ。
・会社のスタッフは数十名だがほぼ業務委託であり、社員は1、2名のみ。
・社名変更や所在地変更してもコーポレートサイトが更新されない。
・社名変更し、変更前と変更後の両方の会社が存在しているかのような掲載をする。
詐欺会社・怪しい会社を見破るには?
詐欺会社・怪しい会社を見破るには運営会社を特定し、会社を調査することで不振な点が無いかチェックします。詐欺サイトでは、記載される運営会社が偽りの可能性もあるため、注意が必要です。運営会社を特定した後は、コーポレートサイト、公的機関のサービスなどで会社情報を調査します。各方法を説明していきます。
まずは運営会社を特定する
まずはサービスの運営会社を特定します。企業が運営するウェブサイトの場合、「運営会社」を記載する事が一般的です。
運営会社は「〇〇事務局」や「サービス名」ではなく、「株式会社〇〇〇」のような会社名になります。ありがちな法人の種類は「株式会社、合同会社、有限会社、非営利法人」です。いずれにも該当しない「〇〇〇事務局」などは会社名ではありません。
以下の順番で運営会社を特定します。フィッシングサイトのような詐欺サイトの場合、信用ある会社に見せかけ虚偽を記載する可能性もあるため、注意が必要です。
1. 運営会社の表記が存在するか確認する
ウェブサイトの下部やメニューにて「運営会社」「会社概要」「会社情報」「企業情報」などの表記が存在するか確認します。
2. ポリシーページが存在するか確認する
ウェブサイトの下部にてポリシーページが存在するか確認します。存在する場合は、各リンク先ページに遷移し会社名を確認します。会社が運営するサイトの場合、「プライバシーポリシー」「個人情報保護方針」「特定商取引法に基づく表記」などのポリシーページが掲載必須となる場合が多く、 特に消費者向け販売サービスなどでウェブサイト内のどこにも掲載が無い場合は法令違反となる可能性があるため、一般的なウェブサイトでは下部でポリシーページへリンクを掲載します。
小規模な会社では適切な記載がない場合もあるため、存在しなからと言って確実に「詐欺会社・怪しい会社」とは断言できませんが、何らかの問題がある可能性があります。また「個人情報や取引に関するポリシーページ」が存在する場合でも、ページ内では会社名が記載されていない場合も存在します。その場合は運営会社は特定できません。
3. 「Copyright 〇〇〇. All rights reserved.」の記載を確認する
ウェブサイトの下部では多くのサイトで「Copyright 〇〇〇. All rights reserved.」のような著作物に関する文言が記載される事が習慣となっています。「〇〇〇」の部分がサイト名になる事もあれば、会社名になる事もあります。会社名が記載された場合は運営会社が判断できます。
三菱商事の例 (https://www.mitsubishicorp.com/)
© Copyright 2024 Mitsubishi Corporation. All Rights Reserved.
4. ドメインのWHOIS(フーイズ)情報を確認する
ウェブサイトのURLが独自ドメインの場合は、ドメインのWHOIS(フーイズ)情報※で登録者情報(会社)を把握できる場合があります。WHOIS情報は運営会社をチェックできる可能性が高く、詐欺サイトのチェックで有効です。
ただしWHOISは登録者情報を隠す事も可能なため、小規模な会社のサービスでは「WHOIS情報代行」と呼ばれる機能を利用し、登録者の情報を隠す場合が多いです。大手のサービスでWHOISを隠すケースは稀です。
※WHOIS情報はドメインの所有者、管理者などを確認できる仕組みです。
WHOIS情報の調べ方:
- さくらのドメインの「Whois検索」に行く。
※さくらのドメイン以外でもWhois検索サービスは存在します。 - ドメインを入力し、検索します。
例: mitsubishicorp.com - 結果が表示されます。
ドメインの種類によって出力される項目が異なりますが、主に「ドメイン作成日」、「ドメイン有効期限」、「登録者情報」、「ネームサーバー」などを確認することができます。
※Whois検索サービスやドメイン種類によっては結果が表示されないケースがあります。
WHOISの結果例:
Creation Date: 1998-12-18T05:00:00Z //ドメイン作成日
Registrar Registration Expiration Date: 2024-12-18T05:00:00Z //ドメイン有効期限
・・・
Registrant Name: Mitsubishi Corporation //登録者名
Registrant Street: 2-3-1 Marunouchi //登録者住所
・・・
Name Server: A9-67.AKAM.NET //ネームサーバー(DNSサーバー)
Name Server: A20-65.AKAM.NET //ネームサーバー(DNSサーバー)
Name Server: A5-65.AKAM.NET //ネームサーバー(DNSサーバー)
・・・
[豆知識] co.jpドメインは信頼性が上がる
sony.co.jpのような”.co.jpのドメイン”では日本に登記している法人しかドメインを取得できないため、.”co.jpドメイン”は信頼性は上がります。ただしドメイン登録時に虚偽情報で申請される可能性もあるため、100%の信頼はできません。
運営会社のコーポレートサイトへ行く
運営会社を特定した後は運営会社のコーポレートサイトを探します。今時会社のコーポレートサイトが存在しない会社は非常に珍しく、特に一般消費者向けサービスを提供する会社でウェブで会社情報を出さない事は何らかの事情があると考えられます。
1. Google検索で会社名を入力し、コーポレートサイトを探す
会社が見つからない場合は、「会社名が異なる」、「名前が若干違う」、「上位に表示されない」などが考えられます。もし見つからない場合は「”株式会社エービーシーディイーエフジー”, “エービーシーディイーエフジー”, “ABCDEFG”」のように「”」で括って検索します。「”」で単語を括ると完全一致の検索になり、検索結果に表示される場合があります。
2. コーポレートサイトに行く
Google検索で会社が見つかった場合、コーポレートサイトに行きます。ある程度以上の規模の会社では必ずコーポレートサイトは存在しますが、小さな会社ではコーポレートサイトが存在せず、「サービスサイトに簡潔に会社情報が記載される程度」の場合もあります。
コーポレートサイトで会社情報をチェックする
コーポレートサイトで会社情報を確認し、不振な点が無いかチェックします。ただしサービスサイトにて運営会社を偽っている場合、見るべきコーポレートサイトが異なる可能性もあるため「運営会社の特定」が間違っていないかも確認していきます。チェック方法は以下の通りです。
1. 会社概要のページに行く
2. 会社名、資本金、代表者名、設立年月日などを確認する
日本の会社では会社概要で「会社名」「資本金」「代表者名」「設立年月日」は記載するのが一般的です。記載が無い場合、何等かの事情があって掲載していないと思われます。(資本金などを記載しなくても法令違反にはなりませんが、記載がないのは普通ではありません。)
3. 情報が画像になってないか確認する
会社概要の「会社名」「資本金」「代表者名」が各情報が画像などになっていないか確認します。何らかの事情で検索エンジンで検索されたくない場合、情報を画像にしている場合があります。
4. 会社所在地を確認する
会社所在地は重要な情報です。以下のような点が確認できます。GoogleマップやGoogleストリートビューを利用してチェックできます。
チェックポイント
・実際に存在する住所か?架空の所在地が掲載されていないか?
・どのような場所・建物に存在するか?マンションの一室、レンタルオフィス、高層ビル、一軒家等々、想定外の場所に存在しないか?
・正確な所在地が記載されているか?例えばマンションの一室の場合、マンション名や部屋番号を割愛した所在地が掲載される場合があります。
・私書箱やシェアオフィス、他の会社の所在地になってないか?所在地を隠したい場合、代替の所在地が記載される場合があります。
5. 所在地と市外局番を確認する
電話番号が掲載されている場合、所在地と市外局番が一致しているか確認します。
6. 事業内容を確認する
事業内容を確認し、目的のサービスサイトを運営しているか?などを確認します。
7. 採用ページを確認する
「採用ページ」では会社の情報が出やすく、重要な参考情報を得られる可能性があります。
8. その他ページを確認する
その他「問い合わせページ」「ニュースページ」「プライバシーポリシーページ」などで何らかの参考情報が無いか確認します。
9. サイトの過去状況を確認する
判断に苦戦する場合は、サイトの過去状況も参考にします。サイトの過去状況はWayback Machine – Internet Archiveで閲覧できます。
コーポレートサイトの間違ったチェック方法
コーポレートサイトの間違ったチェック方法は以下の通りです。
・コーポレートサイトのデザインや雰囲気だけで良し悪しを判断する
見た目はいかようにも作れるため、雰囲気に流された判断は危険です。
・コーポレートサイトの情報の量だけで判断する
コーポレートサイトの情報は会社担当者、または経営者が作っているため、いかようにも発信できます。そのため情報の量だけで判断するのは危険です。「情報の正確さ、情報の質、説明の細部」などの確認が推奨ですが、判断に必要な情報がない場合がほとんどです。
・資本金の大きさだけで会社を判断する
資本金だけでは資金上の良し悪しは判断できません。 また特に小さい会社では仕組みや資本集約的な要素が下がり、経営者や担当者の人柄・実績の方が重要となります。
公的機関のサービスで会社情報を確認する
日本に存在する会社であれば、公的機関のサービスで会社情報を確認できます。「国税庁 法人番号公表サイト」と「日本年金機構 厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システム」です。
各サービスで把握できる情報は多くはありませんが正確な情報が把握でき、また非上場企業の情報も閲覧できるため、非常に貴重な情報源です。貴重な情報源ではありますが「正確な会社名、もしくは法人番号」がないと目的の会社を見つけられない可能性があります。例えば「株式会社ABCD」という名称の会社でも正式名称は「株式会社エイ・ビー・シー・デー」のようなケースがあります。(「・」や「ー」含め、正確な会社名を指定する必要があります)
正確な会社名を入力したにもかかわらず、目的の会社を発見できない場合は「社名変更した」、「会社が解散した」、「会社が存在しない」のいずれかになります。会社が存在する場合は、表示される情報を見て不審な点がないかチェックします。
注意点
・前段階の「会社の特定」を間違えてしまうと、誤った情報を認識してしまうため注意が必要です。
・会社が見つからない場合、入力した社名が正式な社名ではない可能性があります。
・「想定している会社」と「調査している会社」が一致しているか要チェックが必要です。
国税庁 法人番号公表サイト
国税庁の法人番号公表サイトでは、以下のような情報が確認できます。日本国内に存在するすべての会社が検索できるため、小さな会社でもペーパーカンパニーでも外資系の日本法人でも確認可能です。※設立して間もない会社は検索できません。
確認できる情報
・会社名
・法人番号
・所在地
・住所変更 ※変更履歴にて
・合併、閉鎖 ※変更履歴にて
例1:グーグル日本法人の例 (外資の日本法人)
例2:Zホールディングス中間株式会社の例 (中間持株会社)
正確な会社名がわからない場合は「都道府県」、「市区町村」、「カタカナ」、「英語表記」、「前方一致」、「部分一致」などを活用して名称などをわずかに変更しながら目的の会社を見つけます。
日本年金機構 厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システム
日本年金機構の厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システムでは「被保険者数」を確認できます。被保険者数で従業員数、もしくはおおよその社員数が把握可能です。非常に便利なサービスですがキーワード検索は目的の会社が出にくい傾向があるため、「法人番号」を利用した検索がお奨めです。
被保険者数により「会社規模を偽っている」、「誇大表現をしている」など想定外な規模でないかを確認できます。
特徴的なケース
・サービスサイトではそれなりの会社規模に見えても被保険者数は1名。
・会社サイトには従業員数30名となっているが被保険者数は3名となっており虚偽。
・会社サイトには従業員数50名となっているが被保険者数は10名、残り40名は業務委託。
・大企業だが持株会社のため、被保険者数は非常に少ない。例:株式会社TBSホールディングス:59名
・世界的な有名企業だが、日本法人は少ない。例:Facebook Japan合同会社:114名
2つのサイトを簡単に調査する
TX会社調査の会社情報の調査では「法人番号公表サイト」、「厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システム」の2サイトを簡単に調査することができます。会社名、法人番号に対応しており、”見つけにくい会社”を調査する際に便利です。「国税庁 法人番号公表サイト」で会社を特定し、法人番号で被保険者数を調べる手順がお奨めです。
手順
1. 会社情報の調査に行きます。
2. 調査したい会社名を入力し、検索します。例:会社名で検索した例
3. 「会社情報」をクリックする。
4. 「国税庁 法人番号公表サイト」をクリックすると結果が表示されます。 結果で表示される法人番号をコピーします。
5. 会社情報の調査にて法人番号をペーストし、検索します。例:法人番号で検索した例
6. 「厚生年金保険・健康保険 被保険者数(社員数調査)」をクリックすると結果を閲覧できます。
メールや電話でサポートや担当者に確認する
様々な情報を調べても明確に白黒を判定できない場合はメールや電話をして確認します。電話の方が誤魔化しにくくなるため電話が推奨です。また自分の電話番号を把握されたくない場合は「184」を付けて電話します。
電話でのチェックポイント
1. 目的の会社の担当者が出るか?(無関係の別会社が出ないか?)
2. 電話が転送されていないか?
3. サービス(特に大手サービス)には不適切な応対・口調ではないか?
4. サービスや商品についての適切なリテラシーを持っているか?
5. 法律用語などを説明されないか?(一般的な会社のサポート・担当者は安易に法律用語は使わない)
6. 支払いや発送などはサイト記載とおりか?
7. 担当者に想定外の質問をした際、担当者として不適切な反応はないか?
8. その他会社について気になる点があれば質問する。
メールでのチェックポイント
1. 返信メールのドメインは、会社もしくはサービスサイトのドメインか?
2. 返信時間が会社の営業時間を大幅に超えた時間で返信されてないか?
3. サービス(特に大手サービス)には不適切な文言や説明が用いられてないか?
4. ウェブに記載がない事で疑問点を質問し、不自然な回答が返ってこないか?
企業の採用情報を見る
企業の採用情報を調査することで何らかの参考情報を得られる可能性があります。非常に小さな会社では採用情報を見つけることは困難と思われますが、規模がある程度以上の会社では採用情報を見つけることができます。採用情報は企業の情報が出やすいため、貴重な情報源となる可能性があります。
コーポレートサイトで採用情報が存在しない場合でも外部の求人サイトでは採用情報が掲載されていたり、過去掲載の求人を見つけられる可能性もあります。各求人サイトの一括調査の例
登記簿謄本の取得
重要な取引で取引先が安心しきれない場合は、会社の登記簿謄本を取得して情報を確認します。個人・法人問わず大金の取引で取引先が不安な場合などに利用します。登記簿謄本の取得は通常法務局で手続きする必要がありますが、「GVA登記簿取得」ではオンラインで申請でき便利です。