ITエンジニアの年収アップは?将来性は? ~将来的に有望な職種なのか?~

ITエンジニアの短期の年収アップ施策とエンジニア職の将来性について説明します。

ITエンジニアの年収アップは昇格・転職・独立で実現

ITエンジニアで大幅な年収アップ※を狙うには主に昇格・転職・独立があり得ます。※目安20%程度、もしくはそれ以上

ITエンジニアの年収アップ(写真:Unsplash)

1. 昇格・異動

部門管理職への昇格

役職手当が大きな会社で部門管理職に昇格すると大幅にアップします(役職手当が少ない会社では昇格しても大幅アップとはなりません)。昇格基準は会社により異なり、スキル・実績・年齢など様々です。中には決裁者との人間関係や運などで昇格する人もいるでしょう。

エンジニア部門の管理職になる人はエンジニアリング業務からマネージメントや折衝系業務に切り替わります。エンジニア業務とマネージメントの両方が担える必要があり、対象者は多くはありません。また勤務する会社の体制や社風・人の層・決裁者の意向などにも左右され、純粋に仕事が出来れば昇格するわけでもないため、不確実ではあります。

異動/職種(役割)変更

異動・職種(役割)変更は稀であり、またすぐに年収アップは見込めません。ただし異動・職種(役割)変更することで自分が強い分野で成果を出せる可能性があります。また異動することで賞与や給与体系が変わり、中期視点で年収アップする可能性もあります。

2. 転職

給与水準が高い会社への転職

給与水準が高い会社へ転職すると大幅アップできる可能性があります。ただし給与水準が高い会社は人気があり競争が激しいです。求められる業務レベルが高く、基本的に入社難易度は高めになります。

高い専門性・スキルが求められる職種への転職

高い専門性(職種別スキル)が求められる職種は候補者が少なくなり、給与水準が高くなる傾向があります。

専門性の例

セキュリティエンジニアシステムのセキュリティ検証、脆弱性診断、言語やケース別のセキュリティ項目の熟知。
DBエンジニア大規模データベース群の設計、分散、チューニング、運用ノウハウ等。
AIエンジニアpythonでのAI開発。機械学習の各分析方法の熟知。Kerasの熟知。
アーキテクトシステムの全体設計、ミドルウェア等の熟知、システムの重要課題の解消。
研究系エンジニアデータの技術の課題に対するノウハウ、標準仕様(RFC、論文等)の理解。
管理職として転職

役職手当が大きな会社の管理職に転職すると大幅アップが可能です。また経営メンバーとして転職する道も考えられます(重要技術の担当、エンジニア組織管理、CTO、VPoEなど)。ただし慣れない職場環境で責任が発生するポジションへの転職は入社後、負担がかかる場合が多いでしょう。

3. 独立(フリーランス・会社設立)

エンジニアからの独立は、個人事業主と会社設立があり、事業の運営・システム業務の受託・常駐エンジニアなどが考えられます。パターンとして多いのは、個人事業主(フリーランス)での「システム業務の受託、常駐エンジニア・労働の提供」です。

各特徴

事業の運営エンジニアのスキルなどを生かした事業の運営。運営が上手ければ大きな収益になる可能性がある。リスクや不安定な点がデメリット。
システム業務の受託企業のシステム業務の受託。単価が安い案件から高い案件まで様々な案件が存在。納品できないとトラブルになる可能性がある。
常駐エンジニア・労働の提供クライアント企業に指定の勤務時間で労働する。社員に似ており、労働時間がそのまま報酬になるためリスクが低い。

どのパターンでも高収入を狙う機会があります。専門性に強みがあるエンジニアの場合は「専門性を求める会社のシステム業務の受託・常駐エンジニア」がお奨めです。ビジネス面に明るいエンジニアは幅広く活躍できる可能性があり「事業の運営」「システム業務の受託」などで大きな報酬が狙える可能性があります。

ITエンジニアの将来性 ~将来的に有望な職種なのか?~

ITエンジニアは将来的に有望な職種なのか?について、簡単に説明します。

新規案件のニーズが常にある

企業のシステム投資の機会は頻繁に存在し、新規案件は常に生まれます。具体的には企業システム構築、製品システム開発、新規システムの導入、新規分野の技術開拓などです。波はありますが、企業の売上向上や効率化のニーズは常にあり、システム投資は絶えることはあり得ません。

新興市場が生まれる可能性がある

IT系事業では海外発の新たな波により、新しい市場が生まれる可能性があります。近年では「スマホ・ソーシャルゲーム、仮想通貨」が大きな市場に急成長した実績があります。新しい市場が生まれれば、関連するエンジニアのニーズも生まれます。

  • インターネット → ウェブサービス企業、ネット販促
  • ケータイ → モバイルベンチャー
  • スマホ → スマホアプリ企業
  • SNS → ソーシャルゲーム、SNS販促
  • 仮想通貨 → 取引所サービス
  • AI → AI関連サービス
  • ドローン → ドローン関連サービス

高収益の事業が生まれる可能性がある

システムが関わる事業の中には労働集約的ではない事業(例: ゲーム事業、ソフトウェアライセンス事業、SaaS事業など)が存在します。労働集約的ではない事業は大きな利益を生み出す可能性があり、給与水準を上昇させる一因です。高収益になった会社は給与水準を上げて、よりレベルの高い人材を雇おうとしますが、既存従業員の給与水準が上がる事も多いです。そのため成果が低めの人でも社員として企業に在籍していれば恩恵を受けられる可能性があります。

保守案件・サポートが必要

大抵のシステムは保守する必要があります。運用フェーズやサポートも重要であり、システムが多くなればエンジニアが必要になります。保守やサポートは顧客満足度に強く影響するため、会社によっては質の高いエンジニアが配属されている場合もあります。

キャリアアップ・年収アップの道が存在する

エンジニア職は人によって差が出やすい職種であり、誰がやっても似た結果になるような職種ではありません。レベルが低い層から高い層まで幅広く存在し、高いレベルを目指す事も可能な職業です。また他職種よりスキルが具体的に細分化・標準化されています。そのためレベルを上げる事さえできれば、キャリアアップや年収アップを実現しやすい職種です。

スキルがあれば非常に低い給与を回避できる

エンジニア職は勉強や業務経験を積めば手に職がつき、非常に低い給与になるリスクを回避できます。長い年月では、どうしても転職する必要性が出る場合や家庭の事情等で移住する必要がある場合があります。その際、スキルが無い人は交渉材料が基本的に無く、非常に低い給与になってしまう可能性があります。そんな中、エンジニア職は人が不足している場合が多く、企業は待遇面の工夫をしている場合が多いです。そのためスキルを持つ人であれば、給与面に関してもある程度は安心できます。

競合の参入には注意

新興市場は、常に新規参入による競合の脅威が存在します。労働者にとっては新しい人の新規参入が脅威となります。具体的には「他業界からの転職、新卒の参入」などです。新規参入が増えれば競争が激しくなり「給与の上げ幅が少なくなる」、「給与上限が出来る」「自分の評価が相対的に悪くなる」などの影響が考えられます。また場合によっては給与相場が下がるなどの現象もあり得るでしょう。

ITエンジニア職の傾向は多種多様で複雑(写真:Unsplash)

企業タイプ別の傾向

企業タイプ別の傾向です。

大企業(SIer等)

特徴的な人柄まじめ・堅実、優秀系
ビジネススキル必要な場合あり
工程上流工程スキル
技術力中~高
基礎能力中~高
高い給与△~〇
入社に有利な年齢新卒

中小(中堅)システム企業

特徴的な人柄まじめ・堅実
ビジネススキル必要な場合あり
工程下流工程スキル、(上流工程スキル)
技術力低~高
基礎能力低~高
高い給与×~〇
入社に有利な年齢新卒、20代、(30代)

大規模ベンチャー

特徴的な人柄意識高い系、優秀系、個人主義
ビジネススキル基本問われない
工程下流工程スキル、(上流工程スキル)
技術力中~高
高い給与△~〇(◎)
基礎能力中~高
入社に有利な年齢新卒、20代、(30代)

中小ベンチャー

特徴的な人柄若め、意識高い系、多種多様(社風による)
ビジネススキル基本問われない
工程下流工程スキル
技術力低~高
高い給与×~〇
基礎能力低~高
入社に有利な年齢新卒、20代、(30代)

外資系企業

特徴的な人柄意識高い系、優秀系、個人主義
ビジネススキル基本問われない
工程下流工程スキル
技術力
高い給与〇~◎
基礎能力中~高
入社に有利な年齢(新卒)、20代、30代

給与水準別の傾向

高い層 (給与水準: 1000万~2000万以上)

高い層の人は、技術のリード、マネージメント、高い専門性・アウトプットなどが求めらるでしょう。非常に優秀であれば年齢ではなく実力でしっかり評価してくれる会社がお奨めです。

人の例
  • テック企業等で非常に専門性の高い業務が出来る人(年齢問わず)
  • 外資系企業で専門性/成果が高い人
  • CTO, VP of Engineeringなどの役職系エンジニア
オススメの企業タイプ
  • 有名IT企業
  • 外資系本社、外資系日本法人
  • テック企業の重要ポジション
オススメしない企業タイプ
  • 技術を理解できない企業
  • 過度なストレスがある企業
  • 年齢、業務経験年数だけで判定する企業

やや高い層 (給与水準: 700万~900万代)

平均よりやや高い層です。企業の給与は成果が高い優秀な人でも青天井に上昇するわけではありません。上限や厚い壁が存在します。そのため優秀で実績が大きい人でもこの辺が上限の場合があります。

人の例
  • システム会社で長年勤務している人
  • エンジニアリング分野で優秀な人 (会社規模、年齢問わず)
  • 規模がある程度以上のプロジェクトマネージメント職の人
  • 技術チームのマネージメント職の人
  • メガベンチャーなど有名サービスのエンジニア
オススメの企業タイプ
  • SIer
  • 有名IT企業、中堅IT企業、中小IT企業の一部
  • 外資系日本法人
オススメしない企業タイプ
  • 技術を理解できない企業
  • 労働時間が長いため給与水準が高い企業

中間層 (給与水準: 500万~600万代)

エンジニアの中間層です。会社によって違いが大きいため普通を示す事は容易ではありませんが500万、600万前後はよく聞く水準です。「エンジニアの平均が500万、600万程度では安すぎる」と言う人もいるかもしれませんが中小含めると様々な会社が存在し平均的には高くはありません。

人の例
  • 20代半ば~30代
  • 中堅IT企業、中小IT企業の一部
  • システム会社、自社サービス、その他多種多様
オススメの企業タイプ
  • 可能性多数
オススメしない企業タイプ
  • 技術を理解できない企業
  • スキルアップとは無縁の企業

やや低い層 (給与水準: 300万~400万代)

業務経験が少なければ低めなのは当然です。ほとんどの人は若い時期に300万前後など低めの給与水準を経験するでしょう。会社によっては20代半ばで300万程度の会社も存在しますし、年齢が上がっても給与が低い状態が続く場合もあります。給与がすべてではありませんがスキルが高いのに給与が低すぎる場合は転職を検討しても良いでしょう。

人の例
  • 若い人(20代前半)
  • スキルや実績が低い人
  • ゆったり業務をやりたい人
  • 他職種から転向した人
オススメの企業タイプ
  • 可能性多数
  • 自分好みで働ける会社
オススメしない企業タイプ
  • スキルアップとは無縁の企業
  • 評価基準が無い企業、雑な企業

低い層 (給与水準: 200万代)

エンジニアでも200万代など低い層の人もいます。主に中小企業の一部の新卒入社、零細企業の未経験入社などの人が主です。仕事で得られるメリットは給与のみではありませんが、業務経験を積んでも昇給せず割に合わない場合は転職がお奨めです。

人の例
  • スキルや実績が低い人
  • 零細企業にて未経験入社の人
  • 時短勤務、アルバイトなど特別条件が必須の人
オススメの企業タイプ
  • 可能性多数
  • 自分好みで働ける会社
オススメしない企業タイプ
  • 割に合わなすぎる企業

優秀な若手には美味しい職種

成果の高いITエンジニアは様々な企業から非常に強いニーズがあります。成果さえ出せば年齢・学歴に関係なく高い報酬を支払う企業も存在します。人がまったく集まらないため成果以外の条件が緩くなり、若い人は年齢のわりに高い報酬を狙うチャンスがあります。(例:20代半ばで1000万 等)

具体的には下記のような人に可能性があります。

  • 1社目がテック企業や外資系企業などで元々高めな人が転職し待遇をさらに上げた人
  • 企業側が求める特殊な専門分野に明るく対応できる人(例:データ関連、AI関連 等)
  • github等の公開の場で技術力が高いとされている人(やや人気のある人)
  • フリーランスで活動しており企業側からのオファーで採用された人

遠い将来(2040年、2050年)は不明

遠い将来の20年先、30年先(2040年、2050年)でも、SIerやウェブサービス会社は確実に存在するでしょう。一人当たりの売上が今以上に大きくなっている可能性もあります。しかしながらIT業界の事業は変動が激しく予測は容易ではありません。IoT、AI、EC市場、キャッシュレス決済など様々な市場の成長が予想されていますが、遠い将来の状況は不明です。シンクタンクなどが発表する市場予測も当てにならない可能性があります。

さらに発展することは確実ですが、全体的な市場が大きくなってもエンジニアの給与水準は上昇するとは限りません。例えば競合企業が多くなれば価格競争が起きますしトレンドの変化・イノベーションの影響により、一部の市場が縮小するなどは十分考えられます。

注意しないといけない点としては、IT系事業には参入敷居が低い事業が多くあり、また各ジャンルの市場規模(国内)はそれほど大きくない点です。IT系事業は人数のわりに儲かる場合がある点は大きなメリットではありますが、参入敷居が低いと中小や中堅クラスの会社が乱立し、恩恵を受けられる人は少なくなっていってしまいます。(反対の例 : 昔の自動車メーカーやテレビ局、新聞社等は長い期間成長が見込めて市場規模も大きい事業のため、グループの本体企業やその主要子会社等に勤務すれば長い期間で恩恵を受けられた。)

エンジニアの給与に関しては、高いスキルの層は専門性が上がってさらに上昇する可能性はあり得ます。ただし多数を占める中間層は、常に一般的な職種の給与と比較され、現状と似た水準と考えられます。また低スキルの層に関しては、一般人や企業担当者のリテラシー向上、新卒の参入などにより競争が激化し、現状より給与水準が下がる可能性はあり得ます。

システム事業は、ジャンル別にパッケージへの置き換えや部分的なパッケージやライブラリ利用が進み、さらに効率化されると思われますが、報酬面から見ると今と大きな違いはなく同等水準でしょう。そのような状況の中、「多種類の事業を保有する会社、かつパワーのある会社」は、いつの時代でも強い事は間違いありません(安定しない分野では一部の事業が衰退しても、他の事業が成長していける点が重要です)。コングロマリットで多種類の事業を経営し投資していけるビジネス寄りの会社は長期で成長し続ける可能性があり、遠い将来でも強い存在であると思われます。

また断言できる点として、海外IT企業のような高水準になることは環境の違いから考え、遠い将来でも難しいでしょう。(関連:なぜ海外のIT企業の給与は高いのか? )