ベンチャー系IT企業 ~自分好みで働く環境を選べる~

ベンチャー系IT企業について

様々な事業を展開するベンチャー系IT企業(写真: Unsplash)

ベンチャー系IT企業のビジネスモデルは非常に幅広く、サービス提供、ゲーム、メディア、コンサルティング、ツール、顧客もB2C, B2Bなど様々です。ビジネスモデルが様々なため、会社によって働く人のタイプが異なり、社風も異なります。

規模も様々で20、30名程度の会社からメガベンチャーのように1000名以上の会社もあります。様々な会社が存在し選択肢が多い分、自分好みで会社を選択できます。またベンチャーは人集めに積極的です。規模に関係なく積極的に採用を行っている場合が多いです。

モチベーションが高めな社員、オフィス環境、労働環境、給与など、会社規模のわりに環境・条件がやや良い場合が多いです。(同規模の一般的な中小企業(他業種含む)では給与は低く、また場合により長時間労働、経営者の理不尽な指示が横行している場合もあるでしょう。)

また給与が高そうに見えても「求められる成果がそれ以上である」「一部の人の給与が高いだけ」などのケースは往々にしてあり得ます。ただし若手でも重要ポジションに積極登用する傾向もあり、若手にとってはベンチャーはチャンスの場です。そしてベンチャーでは無理をする会社が存在します。そのため明確な目的や意志を持った人にしか向かない場合もあるでしょう。

向いている人

下記が多数当てはまる、もしくはいずれかに非常に強いこだわりがある場合は、ベンチャー系IT企業を狙うのが良いでしょう。

  • その会社の事業やサービスが好きな人
  • その会社の人・環境が好きな人
  • 達成感や”やりがい”を感じたい人
  • 幅広い業務に携わりたい人(兼務業務)
  • 明確な結果を出し、給与交渉したい人
  • スキルアップしたい人
  • ある程度自由にやりたい人
  • 様々な会社に転職してみたい人
  • 特定分野で強みがあり、有利になる人
  • 起業や独立願望があり、勉強したい人
  • 変わった人や意識高い系を許容できる人
  • 前職が様々な会社、もしくは特定の業界・職種の人と繋がりを持ちたい人
  • 勤務時間にこだわりがある人 (遅めの始業やフレックスなど)
  • 勤務地や部署・職種を自分でコントロールしたい人
    ※大企業特有の会社都合(転勤・異動等)が嫌な人
  • 若干のリスクを承知できる人
    ※パフォーマンスダウンによる降格・減給、会社解散など

会社の特徴

地域東京が多い。都市部がほとんど。
オフィス様々。会社が成長すると有名なビルに入る会社が多く、知名度がトップクラスのビルに入居する企業もある(ITベンチャーは高層ビルに入居して人集めをする会社が多い)。
主な株主創業者(社長)、ベンチャーキャピタル、事業会社
※上場企業となっても創業者の持ち株比率が高い場合(30%~51%等)が多い。
事業の例B2Cウェブサービス、ITプロダクト、コンテンツ、ゲーム、B2Bサービス、コンサル、EC、ネット広告代理
職種の例事業開発職、エンジニア(多種多様)、セールス、ディレクター、デザイナー、
クリエーター、PM、コーダー、カスタマーサポート
人の特徴事業により偏る。
例:大手出身が多い、エンジニアが多い、営業が多い、〇〇業界出身者が多い、女性が多い、アグレッシブな人が多い、神経質な人が多い など
年齢層平均年齢30歳前後、30代が多い。50歳など年齢が高い人もわずかにいる。会社によっては非常に若い場合(平均25歳など)もあり。
平均勤続年数短め
残業時間会社による。部門にもよる。会社によっては長め。
福利厚生会社による

給与の特徴

  • ベンチャー企業の平均は安い傾向(日系大手ITと比較)。日本の平均年収よりは高い傾向。(会社が多数あるため多種多様)
  • 会社によっては給与水準が高め、一部のポジションで非常に高い場合もある
  • 職種・人により格差がある。前職が多種多様のため、統一感は基本ない。
  • 結果を出せば年齢に関係なく簡単に昇給できる会社がある。(逆に成果やスキルが低いと年齢が上がってもあまり昇給しない)
  • 責任が大きな人・ハイスキルな人は高い給与設定がある
  • 若いうちは年齢のわりに高い水準の会社がある

給与体系

査定基準スキル・業務成果、転職時の給与交渉
特徴月給が高め(会社、職種にもよる)
月給年収の12分割~14分割、(16分割程度もあり)
※賞与比率は同じ会社でも人により異なる場合があります(Aさんは14分割、Bさんは12分割など)
給与例例1: 年収420万、月給30万(固定残業代10万)、業績賞与60万
例2: 年収600万、月給50万(固定残業代12万)、賞与0万
例3: 年収820万、月給65万(固定残業代+オーバー分20万)、賞与50万
例4: 年収980万、月給70万(固定残業代16万)、賞与140万
残業代固定残業
退職金なし

ベンチャー系IT事業の種類

ベンチャー系IT企業の事業は多種多様です。事業や業務内容により働く人間のタイプもまったく異なります。セールスがほとんどの会社、エンジニアばかりの会社、バランスが取れた会社など様々です。また単語レベルでは似たビジネスモデルでも、実態はまったく異なる場合があります。(例えば、単にセールス重視と言っても「人海戦術でひたすら営業する会社 / 提案の質やルート営業にこだわる会社 / 人に紐づく人脈を利用する会社」、エンジニア重視でも「高い技術を追う会社 / エンジニアが事業を仕切る会社 / 若手中心に沢山のエンジニアがいる会社」など様々です。)

事業の種類(簡易説明)

事業(会社)の種類特徴・傾向
ウェブメディア「小さなメディアを多数展開する会社」「1サイトで100名・200名が携わる会社」などが存在します。自社でウェブコンテンツを作る会社、ユーザーの仕組み作りに注力する会社など手法も様々です。
EC(Eコマース)楽天やZOZOのような大きな会社を筆頭にジャンルに特化した小さな会社が多数存在し、商品ジャンルも幅広いです。営業に注力する会社、システムに注力する会社、仕入れに注力する会社などで会社のタイプが変わります。
コンテンツ系(ゲーム等)エンタメコンテンツやゲームなどを提供する会社です。特に携帯やスマホ向けに注力した会社が急成長しました。自社でコンテンツを作る会社もあれば、コンテンツ向けのプラットフォームや配信サービスに注力する会社もあります。
IT・ウェブ×リアル事業例えばオンライントラベル、金融商品の販売のようにリアル事業に踏み込んだケースです。リアル事業のノウハウが必要になります。(単なる商品販売に見える事業でも認可が必要だったり、リアル側の実現にハードルがある場合です。)
C2C(個人間取引プラットフォーム)例えばクラウドソーシングやシェアリングエコノミー、ソーシャルレンディングなどのように個人と個人の取引の場の提供に注力している会社です。
特定のユーザー層特化サービス医師向け、弁護士向け、中小企業経営者向けなど特定のユーザー層に囲い込んだサービスに注力する会社です。囲い込んでいるユーザー層に特別な強みがあり、事業の強みとしてはITではない可能性があります。
ネット広告GoogleやYahoo広告の販売に注力する会社、アフィリエイトサービスの会社、自社でアドネットワークや配信システムを構築する会社などがあります。営業に注力する会社が多いです。一部にはシステムに注力する会社もあります。
プロダクト・パッケージベンダー・ITサービス主に法人向けでプロダクト・サービスを提供する会社です。プロダクトのジャンルは、業務向け・業界向けツール、システム的なミドルウェア製品など様々です。セールスが多い会社もあれば、ほとんどエンジニアの会社もあります。

ベンチャー系IT企業の注意点 ~ベンチャーは変動が激しい~

環境変動のリスク

ベンチャー系IT企業では人の入退社が頻繁にあり、異動や組織再編、その他の変動など、環境変動がやや多めです。

ベンチャー企業は環境変動が起こりやすい(写真: Unsplash)

環境変動の例

  • 組織再編 (部門の統廃合、分社化など)
  • 事業の売却
  • 評価方法の変更
  • 役職基準の変更
  • 異動・職種変更
  • 仕事内容の変更
  • 周囲の人の入退社
  • 会社収支の変動 (悪化など)

一般的な会社でも上記のような事は起こりますが、ベンチャーは事業の変動(成長や新規事業の挑戦・失敗)が多めです。環境変動により一部では降格や減給があり得ます(会社にもよります)。

環境は半年・1年程度で状況が大きく変わる可能性もあるため注意が必要です。特にリスクがある会社への転職は「簡単に転職できる人(スキルがある、若いなど)」「フリーでもやっていける人」「退職などで給与が減っても問題ない人」のみがお奨めです。

事業(会社)売却・会社解散のリスク

またベンチャー系IT企業の場合、会社が若く不確実な事業の場合、事業売却や会社が解散する可能性がゼロではありません(100名程度の会社でも十分あり得る話です)。
ベンチャーはそもそも転職前提で入社している人が多いため、大きな衝撃には感じないかもしれませんが、注意は必要です。社歴が長く大きなベンチャーではまずありえませんが、採算性が悪いベンチャーでは解散(もしくドラスティックな人員整理)があり得ます。

事業(会社)売却のリスク

事業の売却は採算性が良い事業の売却採算性が悪い事業の売却があります。事業の採算性が良い場合でも「事業ドメインが異なり他の会社に譲渡したい / 売却しキャッシュを得たい」などの理由で売却される場合があります。「採算性が悪い事業の売却」は、お荷物となっている事業を売却します。その会社でお荷物とみなされていても他の会社では欲しい場合はあり売却が成立します。

また事業売却では事業に所属する「人が転籍する場合」と「人は転籍しない場合」があります。

人が転籍となった場合、転職するような感覚に近く給与条件が変わる人もいます。また転籍後は経営方針が大きく変わる可能性があり勤務地や労働時間などの労働環境が変わり、中長期的には仕事内容、昇給度合い、キャリアプランなども変わる可能性があります。つまり大きな環境変動が起きます。

また会社丸ごと売却となり子会社となったり/吸収されたり/社長が変わり経営方針が大きく変わる可能性もあります。(環境変動の可能性は高いですが、規模が大きめな会社では売却前とほとんど環境が変わらない場合もあり得ます)

会社解散のリスク

ベンチャーは採算を取らずに先行投資で事業展開するケースが多々あります。手前の小さな赤字より事業の成長(将来の利益)を優先します。手前で必要なお金は資金調達し、会社がなりたっている状況です。(一般的な会社は必ず採算性を意識しますが、ベンチャーの一部の会社は必ずしも採算性が優先ではありません。)

資金調達に依存している会社で、下記がすべて当てはまる場合は解散の恐れのリスクがあります。

  • 独立系で会社の規模が小さめ
  • 主力事業が大きな赤字 (黒字化の目途も立たない)
  • 会社の価値(人材・ノウハウ等)が小さい
  • 資金調達が難航している

先行投資で経営する事自体は問題ありませんが、お金だけ流れていき事業の価値が生まれない場合は非常に問題で経営不振に陥る可能性があります。そして追加の資金調達が出来なくなり、赤字分のお金を用意することが出来なくなると事業の大幅縮小、他社への売却、会社の解散などの判断を迫られます。

「赤字 or 事業の価値が生み出せない → 資金調達の目途が立たない → 事業縮小や事業転換が検討される → 事業の縮小だと存続意義が無い・事業転換は難しい → 他社への売却が検討される → 売却交渉がうまく進まない※1 → 会社の解散に至る or 解散に近い人員整理 or 解散に近い人員整理※2」

※1 売却価格を下げても回転資金や債務などの問題で買い手が現れない状態です。
※2 建前上、会社を残したり売却に見える場合もありますが事実上の解散です。