IT企業は給与が高いのか?IT企業の給与事情

IT企業は給与が高いのか?

IT企業は給与が高いのか?様々な業界の中で「情報通信業(IT系企業)」はやや高めな業界※と言えます。色々な情報が混ざり、かなり高い業界と思っている人もいるかもしれませんが、日系企業であれば普通の水準の範囲内です。そのためIT企業が特別に給与が高いということはありません。
※参考 : doda 業界別平均年収ランキング / マイナビ 業種別モデル年収平均ランキング

日本のIT企業の給与は高いのか?(写真: Unsplash)

給与が高いケース・低いケース

給与が高いケース

様々な給与水準がある中、IT企業で高めなのは主に下記のケースです。

給与が高い、もしくは高めなケース

  • 大手システム企業の平均給与がやや高め
    NTTデータ 平均年収 828万
  • 大手システム企業の役職者(課長・部長等)が高い
    年収1000万、1200万 等
  • 外資系の日本法人
    セールス・マーケティング・エンジニア 年収1200万 等
  • 外資系企業の本社
    Google Senior Software Engineer : $177K/年(約1900万) by Glassdoor
    上位エンジニアの給与が1億程度の企業も存在
  • 一部の職種に高い報酬を支払う企業(中小・ベンチャー含む)
    エンジニア、セールス 年収1000万、1200万 等
  • 大規模ベンチャーの若手が高め
    新卒400万スタート、20代半ばで600万 等
  • 大規模ベンチャーの平均給与がやや高め
    平均年収700万、800万 等
  • テック企業の技術力が高いエンジニアが高い

特に外資系は大差があります。外資系の場合、本社より日本法人の方がやや低めとなりますが、それでも日系企業と比べると高い給与水準になります。また海外企業の場合、巨大企業(Google、Apple等)は当然高いですが数百名程度の会社でも年収1500万、2000万などの高水準な会社もあります。また外資系企業は日系企業より上限も高いです(格差が出やすい)。一方、日系企業は上限も安く優秀な人でも高い報酬にはなりにくいです(格差が出にくい)。

日系IT企業は「やや高め」という表現がマッチし、他業界と比べても特別高いというわけではありません。当然給与水準が低い業界と比べれば高いですが、業界別に”業界トップの企業”を比較するとあまり高くはありません。IT業界は、商社・金融関連・マスコミなどの大手企業と比べると低くなり、「家電メーカー」と同等程度の給与水準です。

またIT企業に対して給与が高そうな印象があるとすると下記のような要因が考えられるでしょう。良い印象を抱いても社員の給与には直接関係ありません。

給与が高いイメージを作り出す要因

  • 海外巨大IT企業の注目度が高く給与水準も高い
  • 短期間で急成長する会社が存在
  • 利益率が非常に高い会社が存在
  • 注目度が高い有名ビルに入居する会社が存在
  • IPOで経営者の株式売却益が巨額
    創業者がIPOで巨額の資産を手に入れる
  • IT企業創業者の資産ランキング入り
    有名IT企業の創業者が資産ランキングに入る

給与が低いケース

IT系の事業の中には参入敷居が低い事業があり、零細企業や中小企業が多数存在します。強みがない会社や実績が少ない会社、製品力が弱い会社は収益が少ないため、給与水準は低くなります。常に小規模な会社の給与水準が低いというわけではありませんが、低めな傾向であることは事実です。

給与が低いケース

  • 二次請け、三次請け企業
  • 小規模ベンチャー
  • 零細企業 (零細のIT派遣、受託、ウェブ系など)
  • 中堅以下の企業かつ難易度が低い仕事に従事する人

逆に小規模でも高いケース

  • 小規模ベンチャーでもプロフェッショナル人材に厳選する会社
    例: 数十名の専門性の高いコンサル等
  • 営業職、マーケティング職、エンジニア職など一部の職種で簡単に人が集まらず、給与を高く設定する場合がある
  • 小規模特有のイレギュラー(経営者の独断でのイレギュラー)

日系IT企業は仕事内容のわりに安い

IT企業は日本の平均年収と比較するとやや高めな給与水準です。しかしながら他業界と比べると決して高い水準ではなく、仕事内容のわりに安めな一面があります。他業種の業界トップ企業の場合、平均年収が1000万前後以上の企業もありますが日系の主要IT企業では平均年収が1000万前後になる企業はほぼありません。大手SIer、メガベンチャーでもそこまでの水準には至っておらず、平均1000万となるとIT業界では外資系企業、外資との合弁会社、その他わずかな日系企業になります。またベンチャー系企業は転職者の比率が高く、転職相場の給与水準に近づく傾向があり、割安な一面を作り出す一因です。

企業タイプ別の平均水準

状況を企業タイプ別に説明します。

大手SIer

平均給与の水準 700万~800万 代

SIerは比較的コンプライアンス意識が高く、順調に昇給します。残業は少ない傾向です。また比較的建設的なプロセスで仕事を進めていくため、無理が少ないです。ただし若い人は安く、年齢が上がると高くなる年功序列的な状態となっています。
関連: 日系大手IT企業 ~安定重視な人に向いている~

中小・中堅システム企業

平均給与の水準 400万~600万 代

システムの受託開発、システムのB2Bサービス、パッケージソフトなどを提供する中小・中堅のシステム企業の給与水準は多種多様です。基本的には業務経験年数を考慮した年功序列的な給与体系です。また一部の職種で高いケースはあり得ますが多くのケース(平均)は高くはありません。
関連: 中小(中堅)システム企業 ~多種多様~

大規模ベンチャー

平均給与の水準 600万~800万 代

メガベンチャー等の大規模ベンチャーは平均給与がやや高めな場合が多いです。ただしあくまで平均給与であり人により大きな差がある場合があります。実力主義や転職者が多く、同じ年齢でも差が出ます。前職や入社時の給与交渉、入社時期など本人の能力以外の要素でも差が発生します。また仕事量は多めで高めなスキルが求められる傾向です。やや高めに見える給与でも働いている人の仕事量・能力・スキル等を考慮すると、”割安”な給与水準と言えるでしょう。そのため優良大企業からの転職者は仕事量のわりに安いと思う人が多いでしょう。
関連: ベンチャー系IT企業 ~自分好みで選べる~

中小・中堅ベンチャー

平均給与の水準 400万~600万 代

ベンチャー系企業はやや安めの給与水準です(世間一般の平均に近づきます)。社員が若い傾向もあり給与水準が低くなります。ただし「優秀な若い人は年齢のわりにやや高めな報酬が設定される / 責任が重い人は給与が高い」など人により差が出やすくなります。また仕事内容によっては年齢が上がっても給与が低いままの場合もあります。

B2Cウェブサービス系 年齢若め。一部には激安な会社も存在。
プロダクト・パッケージベンダー・B2Bサービス ベンチャーの中では堅実で平均的にやや高め。堅実なため高い給与は設定されにくく激安にもなりにくい。
コンテンツ系(ゲーム等) 年齢若め。大きな利益が出ている会社はベンチャーの中では高め。残業が多い傾向。

関連: ベンチャー系IT企業 ~自分好みで選べる~

外資系・外資との合弁会社

平均給与の水準 700万~1000万、1000万以上

外資系IT企業(日本法人)は幅広い職種で高めな傾向です。海外ではジョブ型採用が基本となっており、スキルを持ち成果を出す人に高い報酬が支払われます。そのような海外本社のスタンスは日本法人にも適用される場合が多く、必要な職種を高めな報酬で採用します。
関連: 外資系IT企業 ~世界展開する事業に携われる・報酬が良い~

なぜIT企業は給与が”高め”なのか?

IT企業の給与にて特に高いのは外資系本社であり、その習慣を引き継いでいる日本法人が高く、また日系企業の一部が高めな状況です。なぜIT企業は給与が高めなのか理由を説明します。

給与は「会社の方針、従業員の個々の事情(要望・能力)、外部(市場)の相場」などによって決まります。つまり会社が給与水準を制御しきれない事が多く、高めの給与水準になるのはそれなりの理由があります。

難しい仕事に採用ニーズがある

難しい仕事が出来る人が必要になると高めな給与で求人が出されます。難しい仕事というのは主に専門職、責任者などの高い結果が求められる仕事です。仕事が難しいため対象となる人が少なく、設定される給与が高くなります。

具体的な職種例
質の高いマーケティング・コンサルティング、目標の高いセールス、PM、技術力の高いエンジニア、技術研究職、経営企画・財務系職種、事業開発、事業責任者

思考力が高い人(地頭が良い人・学歴が高い人)にニーズがある

IT系企業では幅広い職種で論理的に考える仕事が他業界より多めです。そのため思考力が低いと業務がこなせない可能性があるため、思考力が高めな人を採用したがる傾向があります。そして思考力の高い人は様々な会社から強い需要があり、売り手人材です。(売り手人材のため、給与水準も高めになります。)

思考力と言っても様々なジャンルがあり、容易に測ることはできません。そのような状況の中、ある程度の思考力を簡単に探る方法として学歴があります。そして会社によっては学歴フィルターが存在する場合もあります。

学歴フィルターがある会社(人事 → 部門担当者への連絡)
「偏差値60以下の大学は基本NGでお願いします。どうしても採用したい場合は上(上長)に上げて下さい。」

※基本的には多くの会社が成果を出せる人材を最も強く意識するため、学歴中心に判断されることは稀です。

該当職種の相場が高い

該当職種の相場が高い場合、相場より安い求人を出すと人が集まりにくくなるため、相場を意識した高めな設定となります。仕事がさほど難しくない場合でも職種の相場が高いため、相場に応じてやや高い設定となります。

グレー事情がある

グレー事情があり、給与が高くなるケースもあります。給与が高めな裏事情としてありがちです。

グレー事情の例
  • 仕事量が多い
  • 残業が多め
  • 目標が高い
  • 減給や降格がある
  • スキルアップが必須
  • 事業や会社が不安定

退職金が無い

IT業界の転職者が多い会社では退職金が無い場合がほとんどです。退職金のコストが発生しない分、通常の年収を高めに設定できる可能性があります。(あくまで可能性あり、退職金が無いから給与に配分されるとは言い切れません。)

前職の給与が高い

どうしても欲しい人材が給与水準が高い会社にいる場合、同等水準で採用することになるため、給与が高めになります。会社にはアウトプットのわりに給与が高い人がいますが、前職給与が高い場合が多いです。


  • 一流大手企業からの転職者
  • コンサル業界からの転職者
  • 会社経営者からの転職者
  • 外資系からの転職者

給与原資に余裕がある

給与を支払う資金が無ければ給与水準が上がることはありません。仮に少し良い給与で入社しても、しばらくして給与原資が減少すると、昇給がなくなる・もしくは給与がダウンする可能性もあり得ます。原資を得るには人数を抑えて拡大できる事業や資金調達しやすい事業が有利です。主な給与原資の調達方法をピックアップします。

a. 事業の収益(事業が儲かる)

事業が儲かれば給与の資金が生まれます。基本的に事業の状態が良好であれば安心です。IT企業の事業の中にはスケーラビリティに優れた事業があります。労働集約的ではなく大きな増員をせずに事業が拡大できる事業です。売上拡大のわりにコストが抑えられ資金に余裕が生まれるため、人件費にコストを回せます。

事業の例:パッケージソフト、コンテンツ、ウェブサービス、ライセンス事業など

b. 外部からの資金調達(主に投資)

儲かっていなっくても資金調達できれば給与を支払えます。IT企業の中には事業が急成長する会社が存在し、成長中の赤字は大きなマイナスポイントとして見られずに多額の資金を調達できる場合があります。多額の資金調達を何度も出来るほどの企業価値があれば給与原資には困りません。IT企業は他業界の会社より投資されやすい傾向があり、有利な状況です。

c. 親会社からの資金調達(主に借入)

IT事業の子会社の場合で成長フェーズ(設立したばかり)や資金不足の場合、親会社からの資金が給与原資となります。 

親会社の給与水準が高い

親会社などが存在する場合で母体企業の給与水準が高い場合、その習慣を引き継いだ会社の水準は高くなる可能性があります。母体企業の給与水準が常に影響するというわけではありませんが、管理手法や考え方が似れば、似た水準に近づきます。


  • 大手メーカーのIT系事業の子会社
  • 大手コンサル会社のITコンサルの子会社
  • 金融機関のシステム子会社

給与が高そうな印象のPR

一部の高めな職種を目立ってPRさせたり、様々なテクニックを駆使し、あたかも給与水準が高そうな印象を与えるパターンがあります。つまり実態の平均水準はイメージほど高くないケースです。


  • 600万~1300万と求人を掲載。ただしほとんどの人が下限の600万付近となる。
  • 求人のモデル年収は30歳650万。ただしその記載は仕事が出来る方の人であり、平均は30歳550万ほど。
  • 情報が公開される持株会社(例えば50名)の給与は平均900万。ただし情報が公開されていない子会社の大多数の人の平均は500万程度。
  • 会社説明の際に人事担当者が「給与水準が高め、もしくは給与水準を上げる方向性」であると、根拠なく説明する。

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