この記事の対象者
・学生 (高校生、大学生、就活生)
・若手社会人
・用語の意味が気になる一般消費者
資本金とは?
資本金は、BS(貸借対照表)の勘定科目であり、株式による出資の資金調達時に増加します。出資金額の多くが「資本金」として計上されます。
企業の資金調達は主に「エクイティファイナンス(株式による資金調達)」「デットファイナンス(借り入れによる資金調達)」が存在ます(参照: エクイティファイナンスとデットファイナンス)。エクイティファイナンスを実施した際は、新しい株式を株主に発行し資金が会社に提供されます。つまり「資本金は、エクイティファイナンス(株式による資金調達)で得られた資金の規模感をある程度※で判断できる項目」です。※エクイティファイナンス時の出資金額は「資本金」と「資本準備金」に分割する事ができ、「資本金の額 = 出資金額」ではありません。
資本金は会社概要に記載するのが一般的です。そのため部外者でもある程度の出資金額を推測する事ができます。資本金5億となっていれば少なくとも5億は資金調達した事がわかります。しかしながら「資本金が大きい = 会社規模が大きい」「資本金が小さい = 会社規模が小さい」とも言い切れず、あくまで一つの判断材料程度にしかなりません。
資本金と会社規模が連動しないケース
- 資本金1000万だが、売上は大きく従業員数も多い。
- 資本金3億だが、従業員数は数十名で過去事業がうまく軌道に乗らず、資産・資金は非常に少ない。
- 資本金10億だが、外部企業への投資に活用されており、従業員数は非常に少ない。
増資とは?減資とは?
「資本金」に関係する「増資」「減資」の簡易説明です。
増資とは?
資本金の額を増加させる事です。主に株式による資金調達で資本金・資本準備が増える事を示します。企業の資金調達手段の一つとして増資があります。
公募増資とは?
上場企業が、株式市場を介して不特定多数の投資家に新株発行(新株の売却)し、増資する事です。
第三者割当増資とは?
既存株主でも会社関係者でもない特定の第三者を割当先として新株発行(新株の売却)し、増資する事です。
減資とは?
資本金の額を減少させる事です。法律上の会社規模縮小や節税目的などで、減資が行われる場合があります。
「資本金」のありがちな誤解
資本金に関しての「ありがちな誤解」を説明します。「ありがちな誤解(間違い)」を見る事で資本金をスムーズに理解できます。
× 資本金が大きな会社の方が良い会社である。
資本金はあくまで資金調達に関わる項目です。そのため資本金だけで様々な事柄を判断する事はできません。資本金1000万と1億の会社を比べると印象が変わる可能性がありますが、資本金だけで良し悪しを判断するのは危険です。
× 資本金が大きな会社の方が儲かっている。
「資本金が大きな会社の方が売上・利益が大きい」という事は言えません。資本金はあくまで資金調達に関わる項目であり、売上・利益には直接関係ありません。そのため資本金で売上・利益などの経営状況の判断はできません。つまり資本金10億の会社と資本金1000万の会社を比較しても前者が勝るということは言い切れません。
× 資本金は会社概要に記載しないといけない。
資本金の会社概要への記載義務はありません。ただし日本では会社概要に記載する習慣があるため、多くの会社が資本金を公表しています。資本金だけでは経営状況は判断できないため、躊躇せずに記載する会社がほとんどです。
× 資本金で資産規模を予想できる。
資本金で資産規模を予想する事はできません。出資直後の場合は現金が増加するため資産が増えた状態となりますが、様々な企業活動で利用されていき、変動は激しいです。また出資関連以外の動き(事業活動による資産変動、借入等)の方が多く、資産規模を予想する事はできません。
× 資本金で会社規模を予想できる。
資本金で世間一般的な「会社規模」は予想できません。資本金が大きな場合でも従業員数や売上が少ない場合もあれば、資本金が小さくても従業員数が多く売上も大きな会社もあります。ただし法律上では会社規模を資本金で区分するシーンがあり、資本金が大きな会社を「大会社」、資本金が小さな会社を「中小企業」として取り扱われます。中小企業に区分される会社でも売上が大きく有名な会社も存在し、法律上の定義は実態に沿った区分けではありません。
× 銀行からのお金を借りたら資本金が上がる。
銀行からお金を借りても資本金は上がりません。銀行からの借り入れはデットファイナンスに関係し、資本金はエクイティファイナンスに関係します。
× 資本金は保有している現金である。
資本金は保有している現金を示すものではありません。資本金5億と記載がある場合でも現金が非常に少ない場合もあり得ます(例 : 資金を使い果たしてしまった場合は資本金が大きくても資金不足に陥る)。逆に資本金1000万でも巨額の現金を保有する会社も存在します。
× 「資本金 = 資本」である。
普段の会話では「資本金」の事を略して「資本」と言う人がいる可能性がありますが、「資本金」と「資本」が示す意味は異なります。「資本金」は「資本(資本の部)」の中の一部の項目です。「資本の部」は、「純資産の部」に名前が変更されており、資本金以外で「資本剰余金、資本準備金、利益剰余金」等の項目があります。「資本 = 純資産 = 自己資本」であり、「資本」は「純資産」という言い方が一般的です。(「純資産」の中に「資本金」の項目があります。)
× 「資本金 = 資金」である。
資本金は会社の資金とは一致しません。会社の資金は頻繁に変動しますが、資本金は頻繁には変動しません。
× 資本金は株式の時価総額である。
資本金は株式の時価総額ではありません。会社設立直後などでは「資本金=株式の時価総額」となる場合もあり得ますが、非公開企業でも多くのケースで一致する事はありません。(非公開企業でも主に増資時・減資時に株価が都度変わる)
× 株式の時価総額は資本金より常に大きい。
株式の時価総額(株式数 * 株価)は、基本的に資本金の額より大きくなります。しかしながら経営危機となった企業では、資本金より時価総額の方が小さくなるケースはあり得ます。
× 会社が上場すれば常に資本金の額が増える。
上場すると株式による資金調達がしやすくなり、多くの会社が新規株式発行を行い増資します。そして増資すれば基本的に資本金は上がります。しかしながら一部の会社では新規株式発行を行わず、既存の株式を市場に売却するだけの場合があり、その場合は資本金は変動しません。
× 上場企業の資本金は常に大きい。
上場企業は株式を上場しており、資本金が多くなりがちです。増資すれば基本的に資本金は多くなります。しかしながら、上場企業でも減資する場合があり、減資した場合、資本金の額が数億(もしくは1億以下)などになる場合があります。
× 上場企業が増資すれば必ず「増資のお知らせ」が出される。
上場企業が増資した場合でも、常に「増資のお知らせ」が出されるわけではありません。上場企業には開示義務があるため何らかの形で報告されますが、常にわかりやすいお知らせを出す義務はありません。ただし増資が経営上の重要な判断となる局面では開示義務が発生し、速やかに報告されます。また減資の場合も速やかな開示義務が発生します。
わかりにくい報告
「増資以外のお知らせの中のわずかな記載で報告される」「事後報告として公表資料でわずかに記載される」
× 海外企業の資本金は簡単にわかる。
日本の企業では、コーポレートサイトで資本金を簡単に把握することができます。しかしながら海外企業では資本金記載の習慣はないため、簡単に把握する事はできません。特に海外非上場企業は把握困難となります。
× 債務超過になると資本金が減少する、またはゼロになる。
債務超過状態でも、資本金が自然に減少したり、ゼロにはなりません。債務超過は、負債が資産を上回った状態であり、その場合でも減資しない限り、資本金が減少することはありません。債務超過では基本的に「資本欠損」の状態となります。
資本金が大きな会社の傾向
資本金が大きな会社は、株式による資金調達が大きくエクイティファイナンスに積極的な会社となります。エクイティファイナンスではお金を返す必要がないメリットがあり、一部の企業では積極的に活用されています(参考: エクイティファイナンスとは?デットファイナンスとは?)。資本金が大きな会社の具体例としては資本金が大きな会社 256社をご覧下さい。
会社規模のわりに資本金が大きな会社の傾向としては、「買収が盛んな企業」「先行投資を積極的に行う企業(または大きな先行投資が必須の会社)」「金融業」「新興ベンチャー企業(IT関連企業、研究開発型ベンチャー等)」などになります。また資本金が大きくなった理由は企業によって事情が異なります。
資本金で判断できる事
資本金で判断できる事は主に下記の通りです。既述通り、資本金だけで判断できることは多くはありません。
- 若い会社で資本金が大きい場合、ベンチャーキャピタル等からの出資を受けている可能性がある。
- 外部からの出資を受けていないにも関わらず資本金が大きい場合、経営者がお金持ち、もしくは過去に儲かっていた可能性がある。(現在も好調な可能性はある)
- 上場企業で同等規模の会社以上に資本金が大きい場合、直接金融(株式市場、株式による資金調達等)を積極的に活用している可能性がある。巨額が必要になる「会社の買収」が盛んな会社が多い。
資本金・株式・株式市場の関係
資本金・株式・株式市場の関係については「エクイティファイナンス vs デットファイナンス」をご覧ください。