一般的に転職活動は、転職媒体や人材紹介会社経由のエントリーから始まり、数回の面接後、確定し、業務引き継ぎを経て次の会社に入社する流れとなり、通常は長い期間がかかります。転職に慣れている方であれば各ステップは熟知していると思われますが、「転職未経験の方」や「転職回数がわずかな方」の場合は、事前に各ステップを把握したうえで計画的に転職活動を進める事をお奨めします。転職活動は長い期間と労力がかかり、確定がいつ出るのかもわかりません。そのため会社に勤務しながら周辺メンバーには話さず、密かに進める事が一般的です。

目次
転職活動の期間
転職活動の期間は人により大きく異なります。参考: 転職活動はどのくらいの期間がかかるのか?
短いケース : 1.5か月~2か月で次の会社に入社
エントリーから確定まで2週間程度、その後、退職日を1か月~1.5か月先に設定できる場合です。
ありがちなケース : 3か月~5か月で次の会社に入社
複数社のエントリー・面接、1社確定まで1か月~3か月、その後、退職日を2か月前後に設定する場合です。
長いケース : 1年以上
下記のケースでは転職活動期間が長くなります。
- 仕事内容・企業などに強いこだわりを持ち、求人調査に長い期間をかける。
- 役職者等での入社で面接期間が非常に長い。
- エントリーするものの確定に至らず、エントリーし続ける。
転職活動の流れ
求人調査・会社の選定
1. 求人サイト、企業のコーポレートサイトなどで求人を見る
2. 求人の検討 / エントリーする会社の選定
求人を詳細に見て検討します。「業務内容、必須条件、推奨条件、給与、企業情報、事業内容、勤務場所、選考プロセス」などを確認し、自分に合った希望の求人を探します。エントリー時の職種・所属部署は、後々の昇給・労働環境などにも強く影響するため、重要となります。将来を見据えこの段階での詳細確認が推奨です。
人材紹介会社(エージェント)の利用
3. 人材紹介会社(以降エージェント)に登録する
エージェントを利用する場合は、エージェントに登録します。
後日エージェント担当者がヒアリング内容を元に求人を案内してくれます。求職者に合った求人が選定されますが、求人の方向性が違う場合は別の求人をリクエストする事も可能です。
3.1 エージェントからの面談依頼
エージェントに登録すると面談依頼が来ます。様々な事をヒアリングされるため、業種・職種の希望などを考えておきます。エージェントは求職者を応援する立場のため、過剰に準備する必要はありません。またエージェントは求職者が面談しやすい時間帯(夜など)でスケジュール設定できる場合が多いです。
3.2 エージェント担当者との面談
面談(ヒアリング)を元にエージェント担当者にて紹介状が作られるため、PRしたいことは最大限伝えます。要望があれば躊躇せずに伝え、エージェント担当者から所感を聞くのが良いでしょう。この場では求職者が客のため、過剰に気を使う必要はありません。
3.3 エージェントからの求人の案内 & エントリーする会社の選定
募集要項(業務内容、条件等)は、媒体の求人よりエージェントの求人の方が詳細に説明されています。求人を見ながらエントリーする会社の選定します。
レジュメの準備
4. レジュメを準備する
レジュメを準備します。レジュメは書類選考のみならず面接でも利用される重要な書類です。PR内容を入念に検討します。参考: レジュメの印象を良くし選考を有利にする
5. レジュメの最終チェック
レジュメを最終チェックします。該当企業へのエントリー用としてレジュメを最適化するのがお奨めです。
エントリー・書類選考
6. エントリーと書類選考
求人にエントリーすると書類選考が始まります。エージェント利用の場合はエージェント担当者にエントリーを依頼します。
面接前の準備
7. 一次面接の日程調整の連絡
書類選考が通過すると一次面接の日程調整の連絡が来ます。会社によっては19時、20時など転職者に都合がつきやすい時間を設定できる場合もあります。
面接日は勤務している会社には「私用で遅刻、早退などの連絡」「午前・午後半休」「有給」等とする場合が多いです。リモート面接の場合は柔軟な時間設定ができますが、面接は重要なため、余裕を持った時間設定、コンディションが良い時間帯の設定がお奨めです。
8. ウェブテスト
企業によってはウェブテスト(基礎能力テスト)が送られてきます。ウェブテストは判断の参考や足切りのために利用されます。
9. 面接の事前準備
面接準備として「自分の強み・PRの整理」「業務内容の確認」「企業情報、事業内容の確認」を行います。
関連: 面接の質問は想定しておく / 面接の質問集 ~転職時のよくある質問例~
複数回の面接
10. 一次面接
面接官は、現場担当者・現場部門長・人事業務担当者等で1~3人です。中小企業の場合は一次面接から社長の場合もあるでしょう。
- 面接官:現場担当者 / 現場部門長 / 人事業務担当者など
- 一次の結果連絡(目安):1週間~2週間。
- 最終面接までの面接回数(目安):3回程度が多い。
11. リファレンスチェック
企業によってはリファレンスチェックが実施される場合があります。リファレンスチェックは企業側がミスマッチを防ぐ目的で、主に前職や前々職などの上司等に電話で確認が行われます。そのため将来の転職のためにも普段から会社で信用を損ねる行動は取らない事が重要となります。※リファレンスチェックを実質する会社は外資系企業、その他一部の企業です。
リファレンスチェックの主な内容
- 在籍実績の確認
- 役割の確認
- 仕事状況の確認
12. 二次面接 ~ 最終面接
一次面接通過後のステップ数は企業により異なります。計3回程度が多いでしょう。
- 面接官:現場部門長 / 事業部長 / 取締役 / 社長など
- 二次以降の結果連絡(目安):1週間 ~ 1ヶ月
13. 条件面談(オファー面談)
無事面接が通過した後は条件面談(オファー面談)が実施される場合があります。(条件面談は最終面接の中で行われる場合もあれば、独立して行われる場合もあります)
雇用条件の詳細を調整します。最終面接が終われば業務の鋭い質問をされることはありませんが、条件面談は重要なため気を抜かずに取り組みます。一次面接でもおおよその希望給与を聞かれますが、この段階で正式な詳細条件が確定されます。場合により、1次面談時と異なる打診がなされる場合もありえます。
確定・退職日と入社日の調整
14. 内定・確定(承諾連絡)
条件交渉が済んだ後は正式に内定通知が来ます。エージェント利用の場合は、エージェント担当者より連絡が来ます。問題なければ入社の意思を伝え確定(承諾)します。もし辞退する場合はこの段階が最後です。
15. 現職の退職日の調整 / 転職先への入社日の連絡
現職に退職の意向を伝え、最終出社日と退職日を調整します。正式な退職日を決め、転職先に入社日を連絡します。現職から退職日の延長の要望が出る可能性があります。期間の感覚は業界にもよりますが、次の会社の都合もあるため長くても2,3か月程度以内が良いでしょう。また重要な役職者でない限り、長い期間待つ必要性はありません。非常にしつこく延長を求められた場合でも、会社側のコミュニケーション不足・勉強不足等が招いた結果のため、沿う必要はありません。自身で会社側を手助けしたいと思えば、長めにするのが良いでしょう。
16. 雇用契約書、または採用通知書などを受け取り最終確定
雇用条件や入社日が記載された書類が送付されてきます。必要に応じて企業側に内定承諾書を送付します。
退職日まで
17. 業務の引継ぎ
最終出社日までトラブルなどを起こさないよう業務の引き継ぎなどを行います。
18. 最終出社日から退職日まで
最終出社日から退職日までは有給消化で休みとなります。人や会社により異なりますが、1週間~半月程度の有給を消化するケースが多いと思われます。最終出社日の翌日を次の会社の入社日に設定する人もいるでしょう。
新しい会社へ入社
19. 新しい会社への入社
転職先への入社日となり、新しい会社に出社します。
20. 入社後の各種手続き
入社後の各種手続きは、新しい会社の入社手続き・個人の手続きがあります。
会社の手続き
- 雇用契約書
- 入社誓約書
- 身元保証書(親族等の署名)
- 機密保持契約書
- 卒業証明書の提出
- 住民票記載事項証明書の提出
- その他(交通費、給与振込先 等)
個人の手続き
個人の手続きの多くは会社が代行してくれる場合が多いですが、漏れを出さないためにも個人でのチェックが推奨です。
- 社会保険手続き(雇用保険被保険者証等の発行手続き)
- 住民税納付手続き(会社代行、または個人での手続き)
- ローン利用時の勤務先変更 (報告義務がある場合)
- クレジットカード利用時の勤務先変更
21. 入社後は成果を出し、良好な人間関係を作る
無事次の会社へ入社した場合でも安堵はできません。新天地では基本的にあなたの能力・実績を知る人はおらず、成果を出して役に立てる事を証明していく必要があります。入社直後は歓迎ムードですが、しばらくすれば通常の状態となり仕事の成果やスキルにより、人間関係が変動する可能性もあり得ます。重々しく考える必要はありませんが重要事項ではあるため、成果と新天地での人間関係は意識していくのが良いでしょう。
※上記の流れは企業により異なる場合があります。(順序が異なる / 一部手順の省略 / 簡略化 / 複雑化)
転職活動はどのくらいの期間がかかるのか?

どのくらいの期間がかかるのか?
転職活動の期間は人によって大きく異なります。一つの企業のエントリーから最終確定までは年収や役割・雇用形態にもよりますが、1か月程度はかかります。(面接3回程度と各ステップでの検討で時間がかかります)
各選考での検討(待ち)
書類選考 → 待ち → 1次 → 待ち → 2次 → 待ち → 最終 → 待ち → 確定
人によっては非常に短期で決まる場合もあり得ますが、長い場合は3か月以上かかるなどもあり得るでしょう。途中の面接で落とされてしまうと再スタートとなってしまうため、別の企業にもエントリーしていきます。1社の選考に時間がかかるため、複数の会社を同時並行で進めるのが一般的です。
また確定後も業務引継ぎ期間が必要で、次の会社に入社するまである程度の時間がかかります。仮に転職活動を開始して3か月後に確定し入社日を2か月後とすると、5か月後に転職することになります。この5か月というのは非常に長い方ではなくありきたりなケースです。長い場合は、転職活動で半年かかり、その後業務引き継ぎなどを行い退職まで半年程度で、転職活動開始から新しい会社に入社するまで約1年かかる場合もあります。また退職の意思を伝えると上役から引き留めや給与条件改善もあり得るでしょう。
企業から返答が来ない場合は?
企業からの選考結果の待ち時間は、数日で回答が来る場合もあれば、1週間~2週間程度、長い場合は1か月、2か月程度かかる場合もあり得ます。その際、企業に返答時期を聞くのは”あり”ですが、何度もしつこく聞くのはよくありません。また返答時期が「未定」と言われてしまった場合は他のエントリー者と比較している可能性があり、待つしかありません。検討に非常に長い期間がかかっている場合は可能性は低いと考え、他社の選考を進めるのが良いでしょう。
選考で時間がかかる主な理由
選考で時間がかかる主な理由は下記の通りです。
スピーディに決まる場合もある
求職者が非常に良い人材の場合、他の会社より早く確保するためにスピーディに確定するケースがあります。イレギュラーで面接を短縮したり、1次面接の後にほぼ確定しオファー面談(条件詰め)に入るケースもあり得ます。非常にスピーディな場合、1週間程度などの短期間で確定する場合もあるでしょう。
スカウトされると非常に楽
採用活動の中には、稀に経営者や事業部門(部門決裁者)から直接声をかけスカウトする場合があります。スカウトサービスの利用ではなく取引先や知人などのツテで直接声をかけるケースです。この場合、面接や各チェックなどの選考も緩めになり、諸々手続きが楽になる場合が多いでしょう。
退職日はいつ頃が良いのか?(退職通知について)
退職日はいつ頃が良いのか?労働基準法では2週間前の通知で退職可能となっていますが、会社の雇用契約では1か月前通知としている会社が多いでしょう。ただし1か月後ジャストで退職するというのはやや一方的です(1か月の場合、有給消化もあり実質勤務2週間程度も考えられます)。常識的な期間(1.5か月後~3か月後)で調整するのが良いでしょう。一般的な会社員の場合、仮に会社側が「6か月後にして欲しい」のように長い期間で打診された場合でも、転職先からの希望を聞いて転職先を優先した方が良いでしょう。
退職通知のタイミング
- 労働基準法 : 2週間前 → 法律が最も優先される
- 会社の雇用契約 : 1か月前告知が一般的
- 業務上の常識 : 1.5か月前 ~ 3か月前程度
会社側に非がある場合は?
会社側に非がある場合は1か月前通知で十分です。給与未払いなど状況が酷い場合は2週間前で問題ないでしょう。退職は労働者の権利のため、会社側が強制できる事ではありません。ただし2週間前通告は異常ではあるため、やむを得ない場合で活用するのが良いでしょう。
また会社側と揉(も)めて、状況が深刻な場合は社労士・弁護士などへの相談がお奨めです。労働基準法では労働者に有利な条件が定められていますが「人間関係のトラブル」「村八分のような状態に陥る」「予想外のトラブルに発展する」など、雇用以外のトラブルへ発展する可能性もあり得るためです。そのため深刻な場合は、専門家に外部視点の客観的な判断を依頼するのがお奨めです。